#1 「ケアレスミス」といっているうちは、ミスは減らない

 私の仕事がら、小学生のお子さんをお持ちの保護者の方とお話ししていると、「うちの子、いつもケアレスミスばかりして・・・」とか、「ケアレスミスはどうしたらなくなるんでしょう」と相談を受けることが多い。

 まず、子どもは思わぬミスをするものだ。私の小さいころを思い出しても、簡単な計算ミスはしょっちゅうしていたし、答えの写し間違えもよくやっていた。中学生、高校生とだんだん成長するにつれて、こういうミスはよくないな、と自分で考えるようになり、それでようやくミスが少なくなっていったように思う。

 私の話はさておき、相談にきた保護者の方に、お子さんがケアレスミスをしてしまう理由を聞いてみると、注意力がなくて、とか、計算が苦手で、とお話しされることが多い。むろんそれらも理由のひとつであることは間違いない。

 しかし、一度立ち止まって、「ケアレスミス」と思っていたものを見直してみよう。どんなミスを「ケアレス」、すなわち、「注意が欠けた」ミスといっているのだろうか。

 たとえば、ケアレスミスといわれる計算ミスでよくあるのは、0と6を間違える、というものだ。時間がなくてあわてていたのか、0を書いたはずが、次の瞬間には6と見間違えてそのまま計算してしまう。結果、間違ってしまう。

 さて、このミスの原因を少し分析してみよう。「時間がなくてあわてていた」「0を6と見間違えた」・・・そうか、あわてていたから、0をうまく書けずに、6と区別できないような字にしてしまったのか。次からはあわてないようにしよう! あわてなければ、こんな問題、間違えるはずがない・・・と、これはダメな分析例。

 何度も繰り返し同じミスをしているようなら、なぜくり返してしまうのかを分析しなければならない。いつも0の書き始めと書き終わりがうまく閉じず、丸の大きい6っぽくなっている。もしそうであれば、これは「直せるミス」だ。たとえば、日ごろから0は丸を大きく書こう、6は丸を小さく書こう、と心がけておけば、たとえあわてていて、0の丸の端が閉じなくても、丸の大きさで0か6かの区別がつく、といったように。

 もうひとつ、よくありそうなパターンを示しておこう。ハードな練習をやって疲れたあとのテストで、問題は正しく解けたのに、それを解答用紙に写すところで間違えてしまった。疲れていて、集中力が散漫になってしまった・・・。

 これは確かに「ケアレス」なミスかと思う。集中力がなくなってしまったことによる注意力の欠如。よくあり得ることだろう。今回の例では練習で疲れて・・・ということだが、睡眠不足という理由でも同じようなミスが起こり得るかもしれない。

 では、こんな場合の対策はどうしたらよいのか。もちろん、テスト前にはハードな練習などせず、または、夜更かしなどせず、万全の体調で臨む。これができれば一番いいのだが、そうもいかない場合だってたくさんある。

 ひとつの解決法は、集中力の強弱をつける、ということだろう。最低限、集中しなければならない部分をちゃんと押さえる、ということだ。たとえ問題が解けていても、回答用紙に記入するところで写し間違えてしまえば点数はもらえない。マークシートの記入をずらしてしまったら0点なわけだ。自分が求めた答えを解答用紙に記入するという最後の段階こそ、最大の集中力で臨むべき、と知っておくことが大切だ。

 ミスのパターンを見抜き、たとえミスが誘発されやすい状況においても、ミスをしづらくするような対策が取れるものは、「ケアレスミス」とは言わない方がいい。「ケアレスミス」という言葉には、「注意深く取り組めば解けていた」という感情がひそんでいることを忘れてはいけない。「ミスをした」という事実を、正面からとらえることを放棄してしまっている言葉なのだろう。

 そして、お子さんにも「ケアレスミスだね」というのはちゃんと考えてからの方がいい。子どもも「ケアレスミス」とはミスに対する免罪符、と認識していることが往々にしてある。「ケアレスミス」といっているうちは、ミスは減らないのだ。

(記:木村 浩)

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