#3 「まなぶ」は「まね●●ぶ」

 「うちの子は本を読まなくて・・・」

 お子さんが小学校5・6年生や中学生になってきて、国語の成績が伸び悩んだりすると、保護者の方からよく聞くようになる悩みだ。

 確かに国語の成績を伸ばすには、文章を読み解く力が必要だ。それだけでなく、理科や社会、算数でさえ、文章を読み解く力がなければ、問題文の意味を正確に理解することができない。それでは正しい答えを導くことはむずかしい。

 だから子どもたちには本を読んでほしい。読み解く力を身につけてほしい。とてもわかる。では、どうしたら子どもたちが本を読むようになるのだろうか。

 少し根本的な話から始めよう。

「まなぶ」とは「まね●●ぶ」が語源ともいわれている。特に幼稚園や小学校低学年くらいまでの子どもたちは、周りの大人、特に親の様子を見てまねをする、つまり、「まね●●ぶ」のだ。

 子どもたちは、周りの大人のことをよく見ている。そして、まねをする。・・・話は少し横に反れるが、私はいくつかの教室で子どもたちに合氣道を指導している。合氣道は「調和の武道」であり、試合で勝ち負けを決めるようなことはしない。稽古は複雑な投げ技や締め技の「型」の習得を中心に行われる。小さい子どもたちには難しい武道だと、指導している身ながらつくづく思っている。

 しかし、大人が見ても複雑な技を、子どもたちはどんどん覚えてしまう。私の動きを見てまねることで、そのままできるようになってしまうのだ。右足を一歩引いて、次に左手をこう動かして・・・なんて口で説明しても、まったくピンとこない。私の経験からすれば、説明していることを頭で理解して、ちゃんと身体を動かせるようになるのは、中学生前後といったところだろうか。

 話を戻そう。子どもたちはいつでも周りの大人のことをよく見ている。そして、大人のまねをすることで、多くのことをまなんでいく。特に、自分の親がいつも楽しそうにしていることを見ると、それを自分もまねて、やってみようとする。やってしまう。だって楽しそうだから。

 読書もしかり。

 子どもたちに本を読んでほしければ、子どもたちの前で、親が楽しそうに本を読んでいればよいのだ。子どもたちは親が読んでいる本に興味をもって近寄ってくる。「それ何? 何読んでるの? 楽しいの?」そうしたら、一緒に読んでみればよい。本が簡単とか、むずかしいとかは関係ない。「こんな本を読んでいるんだよ、一緒に見る?」

 場合によっては、むずかしい、わかんない、とはなれていってしまうだろう。でも、構わない。楽しそうに読み続ければよい。何度でも繰り返せばよい。子どもたちにとっては、自分の前で親が楽しそうに本を読んでいる、いつも読んでいて、いつも楽しそう・・・この認識が大切だ。そのうちに自分にあった本を見つけてきて、パラパラと眺めはじめるだろう。「読んで」とせがんでくるだろう。自分で読むようになるだろう。これが、子どもたちが本を読むようになる第一歩だ。

 ここまでくれば、あとは本を読める環境を整えればよい。読んでほしい本、読みたくなるような本を子ども用の本棚にならべておく。誕生日のプレゼントとして絵本をあげるのもよい。本をもらえてうれしい、本を読むのは楽しいと感じるようになれば、子どもたちはどんどん自主的に本を読むようになってくれるだろう。

 さて、お察しの通り、子どもたちはよくない行動もまね●●ぶ。お子さんが中学生くらいになるとよく聞く悩み、「うちの子はスマホばっかりいじってて。」そう、自分自身がスマホとどう付き合っているかを見直してみよう。たとえば極端な話、自分は仕事以外にスマホを使わないと決めて、実際そうしていれば、子どもにスマホは適切に使いなさいということにも説得力がでてくる。

 もちろんスマホだけではない。整理整頓、掃除、あいさつ、行儀、礼儀、悪口をいわない。しつけといわれるものすべてが同じ。子どもたちにいう前に、自分がまずそのことをしっかりやっているか、どうか。「子どもたちは自分自身の鏡である」 ・・・自戒をこめて。

(記:木村 浩)

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