#5 さあ、夏休みの宿題だ ② ~好奇心を育てよう~

 今回は、夏休みの宿題にどう取り組むかの後編だ。読書感想文や自由研究、工作、絵など、具体的にこれをやりなさいと決まっていない宿題にはどう取り組めばよいのか。

 これらの宿題の特徴は、最初にテーマを決める必要があることだ。読書感想文だったらどんな本を読むのか、自由研究なら何に注目して調べるのか、工作や絵なら何を作ったり、描いたりするのか。テーマさえ決まってしまえば、あとはやるだけなので、半分くらいは終わったも同然だ。

 テーマをどう決めるのかはとても大切だ。子どもたちが本当にやりたいこと、熱中できることを決めてもらおう。ここに大人の論理は必要ない。それは難しいんじゃない? 時間がかかるから大変だよ。ほんとうにできるの? こんなことをいっていたら、子どもたちのやる気はみるみるうちにそがれていって、やれるものもやれなくなってしまう。何よりも、ものごとに対する好奇心がなくなってしまう。

 好奇心は、小さい子どもたちなら、みんな必ずもっているものだ。子どもたちはいつもと違う変わったものに興味をしめす。たとえば、大人では気付けないような小さなゴミなどもよく発見する。大人からすれば、よくもそんなゴミを発見できるものだと驚くが、これも好奇心のなせる業。普段と異なる何かに気づき、未知の世界に飛び込んでいく、つまりチャレンジするドリブン(行動を後押しする要因)として機能する。この好奇心を刺激してあげるように、子どもたちにはいろんな経験をさせてあげることが大切だ。

 ここでは自由研究を例にとって考えてみよう。テーマは本当になんでもよい。子どもたちの好奇心を刺激することを選んでもらうようにしよう。もちろん子どもたちにとって、まったく経験のないゼロの状態からテーマを思いつくのはとても大変だ。だから、親や大人がいろんなテーマを提案してあげてもよいだろう。最近はやりの自由研究キットを有効活用する手だってある。子どもと一緒に探しにいって、子どもの気に入ったものを購入して取り組んでもらう。

 このとき、必ず複数の提案を示してあげるように注意しよう。ひとつしか提案しないと、子どもにとっては押し付けられてやらされる感覚になってしまうかもしれない。自由研究キットも親や大人が買ってきて、これをやれば宿題が簡単に終わるよ、なんていうのもダメだ。子どもたちが好奇心を発揮し、自分で自分のやりたいことを見つけるチャンスなのに、むざむざとそのチャンスをつぶしていることになる。

 子どもたちは自分自身で決めたテーマならば、好奇心と集中力をもって取り組んでくれるだろう。もしも途中で放り出してしまいそうになっていたら、まず、自分で決めたことなんだから、ちゃんと最後までやりなさい、ということを確認しよう。そして、なんで放り出しそうになっているのかを問いかける。何かむずかしいことがあったのか、どこかで詰まってしまったのか、もしくは飽きてしまったのか。これらがわかれば、このあと子どもがどう対応していけばいいかについて、アドバイスしてあげられるだろう。場合によっては、テーマを変えることを提案したっていい。

 また、自由研究をうまくやるとか、それっぽくまとめることを一番の目標にしてはいけない。自由研究に正解などない。別に失敗したっていい。正直にありのままに書いて、なんで失敗してしまったのかを反省してまとめれば、それで完成だ。なんなら失敗したときのほうが、子どもたちにとってはまなびが大きいかもしれない。

 さて、夏休みというのは、子どもたちにとってはとても長い期間だ。その長い期間を概ねちゃんとスケジュールどおりにやり切ったという経験ができれば、毎日の小さな目標を積み上げて大きな目標を達成したという自信につながる。自分はそれだけのやりきる力、ねばり強さを持っていると思うことができる。これが「自分はやればできる」という自己肯定感になる。

 夏休みの宿題に取り組むからこその「気質」の訓練。この夏は、子どもたちの気質を鍛える機会にしてはどうだろうか。

(記:木村 浩)

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